帳簿をつける義務は全員にある
「自分はコードを書いているだけだし、帳簿なんて大げさでは?」と思うかもしれません。でも、個人事業主としてフリーランスで働いている場合、青色申告・白色申告を問わず、帳簿をつけて保存する義務があります。これは2014年の法改正以降、所得の金額にかかわらず全員が対象です。
帳簿をきちんとつけておくと、確定申告がスムーズになるだけでなく、毎月の利益を把握できるので「今月はソフトウェアの年額払いが重なって出費が多かったな」といった振り返りにも役立ちます。
フリーランスエンジニアの帳簿づけ3ステップ
帳簿と聞くと難しそうですが、やることは大きく3つだけです。
ステップ1:売上を毎月記録する
フリーランスエンジニアの売上は、業務委託契約にもとづく月額報酬が中心です。ポイントは、請求書の発行日(売上が確定した日)と実際の入金日を分けて記録すること。発生主義で記帳すると、年をまたぐ報酬の計上漏れを防げます。
請求書はExcelやPDFで自作するのではなく、マネーフォワード クラウド確定申告やfreee会計に付属している請求書発行機能を使うのがおすすめです。会計ソフト側で請求書を発行すれば、売上の仕訳が自動で作成されるので、入力の手間も転記ミスもなくなります。どのみち会計ソフトに売上を入力する必要があるなら、最初から会計ソフトの中で請求書を作ってしまうのが合理的です。
複数のクライアントから報酬を受け取っている場合は、案件ごとに分けて記録しておくと、どの案件がどれだけ稼いでいるかが見えるようになります。事業用の銀行口座を1つ用意して、報酬の入金先をすべてそこに集約すると、通帳と帳簿の突き合わせがラクになります。
ステップ2:経費の領収書を整理する
クラウドサービスの利用料やPC関連の支出があったら、領収書や利用明細を月ごとに分けて保管します。12枚のフォルダを用意して、1月~12月と名前をつけておくだけで十分です。クレジットカード払いの場合は利用明細も保管しておきましょう。
フリーランスエンジニアに多い経費の仕訳例はこちらです。
| 支払い内容 | 勘定科目 | 補足 |
|---|---|---|
| AWS・GCP・Azureなどのサーバー費用 | 通信費 | 月額・従量課金ともに |
| GitHub・JetBrains IDEなどの利用料 | 通信費 | 年額払いでもOK |
| PC・ディスプレイの購入 | 消耗品費 or 減価償却費 | 10万円未満なら消耗品費、以上なら減価償却(4年) |
| 技術書・専門書 | 新聞図書費 | Kindle版も同じ |
| 自宅のインターネット回線 | 通信費 | 業務使用割合で按分 |
| コワーキングスペース利用料 | 地代家賃 | 月額契約・ドロップインともに |
| Udemy・カンファレンス参加費 | 研修費 | 交通費・宿泊費も別途計上可 |
| 自宅の家賃・電気代 | 地代家賃・水道光熱費 | 作業スペースの面積や使用時間で按分 |
経費の支払いはなるべく事業専用のクレジットカードにまとめると、あとで帳簿へ入力するときに漏れが減ります。プライベートのカードと混ざると、どれが経費でどれが私用なのかを毎月仕訳る手間が発生します。
ステップ3:会計ソフトに入力する
手書きの帳簿でも申告はできますが、転記ミスや計算ミスが起きやすいので、会計ソフトの利用がおすすめです。今は「いつ・何を・いくらで」を入力するだけで、複式簿記の帳簿を自動で作ってくれます。
主なクラウド会計ソフトの比較はこちらです。
| ソフト名 | 年額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| マネーフォワード クラウド確定申告 | 年11,880円~ | 銀行口座やカードとの連携が強い。複式簿記の基本を知っていれば迷わず使える |
| freee会計 | 年12,936円~ | UIは洗練されているが、独自の「取引」概念があり慣れるまで時間がかかる |
当事務所ではマネーフォワード クラウド確定申告をおすすめしています。freee会計は「簿記の知識がなくても使える」とうたっていますが、実際には独自の操作体系(「取引」単位での入力やプラス更新など)を覚える必要があり、かえって混乱しやすいケースが少なくありません。マネーフォワードはUIの洗練度ではfreeeに劣るものの、一般的な複式簿記のルールに沿った入力方式なので、基本的な簿記の知識さえあればすぐに使いこなせます。
なお、最近ではChatGPTやClaudeなどの生成AIに仕訳を聞きながら確定申告を進めることも技術的には可能です。ただし、複式簿記のルールを正しく理解していないとAIの回答が正しいかどうか判断できないため、まずはクラウド会計ソフトで基本を押さえるのが確実です。
帳簿・領収書の保存期間に注意
作成した帳簿や領収書は、確定申告が終わっても捨てられません。保存期間は申告の種類によって異なります。
- 青色申告の帳簿 — 7年間
- 青色申告の領収書・請求書 — 7年間(前々年の所得300万円以下なら5年間)
- 白色申告の帳簿 — 7年間
- 白色申告の領収書 — 5年間
たとえば2025年分の帳簿は、2026年3月の申告期限翌日から起算して7年間、つまり2033年3月まで保管が必要です。万が一の税務調査に備えて、すぐ取り出せるように整理しておきましょう。
65万円控除を受けるなら電子申告がカギ
青色申告では最大65万円の特別控除が受けられますが、この満額控除を受けるには複式簿記での記帳に加えて、e-Tax(電子申告)または電子帳簿保存のどちらかが必要です。これを満たさない場合、控除額は55万円に下がります。
会計ソフトを使えば複式簿記は自動で作成されますし、e-Taxでの提出もソフトからそのまま行えるものがほとんどです。年間10万円の控除の差は、所得税率が10%の方でも約1万円、20%の方なら約2万円の節税になるので、早めに電子申告の環境を整えておいて損はありません。
当事務所のサポート
「帳簿のつけ方がこれで合っているか不安」「会計ソフトの初期設定を手伝ってほしい」——そんなフリーランスエンジニアの方を、当事務所はサポートしています。
日々の記帳のやり方から青色申告の手続きまで、IT業界の経費構造に詳しいスタッフが丁寧にご案内します。まずはお気軽にお問い合わせください。
